東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)69号 判決
事実及び理由
一 前掲請求の原因のうち、本願考案につき、出願から審決の成立にいたるまでの特許庁における手続、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、右審決の取消事由の存否について考察する。
原告は、本願考案においては荷役作業の必要に応じて継ぎ足しブームを連結すべき「伸縮ブーム」が、それ自体の先端部に荷役装置を常備し、これによつて荷役作業ができるように構成されるものであるとし、これを前提に、第一引用例に本願考案における伸縮ブーム及び継ぎ足しブームが記載されているとする審決の認定を誤りであると主張するが、本願考案の要旨としてさきに確定したところでは、「基端側の外側ブーム内に先端側の内側ブームを摺動自在に嵌挿してなる」ものが伸縮ブームと指称されているだけで、伸縮ブームと荷役装置との関係については何ら規定されず、成立に争いのない甲第六号証(本願の実用新案公報)によれば、その出願明細書中、考案の詳細な説明においても、伸縮ブームに原告主張のような限定を加えたものと受取られる記載を認めることができない。のみならず、同号証によれば、右考案の詳細な説明には、本願考案の目的について「この考案は、特に継ぎ足しブームの運搬並びにその着脱等に要する手数を省き、極めて取扱いが容易で、それを格納状態にしたままでも、そのままで支障なく伸縮ブームの伸縮操作を行いうる如き継ぎ足しブームを提供しようとするもので」あるとの記載、その作用効果について「この考案の継ぎ足しブームは、上述の如くその張り出しあるいは格納操作を極めて容易に行うことができるのであるから、従来の継ぎ足しブームにおけるが如き着脱及び運搬等の不便さは完全に解消される」との記載がある反面、ブームに設置される荷役装置については、実施例を掲げた図面にフツクが示されているだけで、その構成、作用(特に、継ぎ足しブームの張出し、格納に際しての処置)、効果等に関する記載が全くないことが認められるから、これらの点に徴すると、むしろ、本願考案は、単に、従来伸縮ブームに取付、取外しして使用していた継ぎ足しブームを張出し及び格納自在に伸縮ブームに枢着連結することを課題としたものであつて、伸縮ブームに荷役装置を備えるか否かはその考案の構成に何ら関係のない事項であるといわなければならない。
そして、一方、成立に争いのない甲第四号証(第一引用例)によれば、第一引用例には継ぎ足しブームに関する審決認定どおりの記載があること、これを本願考案の要旨と対比すると、両者の構成は審決認定の点において一致することが認められる。
それならば、原告の右主張は、根拠のない前提に立脚して審決の認定を非難するに外ならないから、失当というべきである。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。